【進路選択】金銭面から見た大学進学のススメ (高専生・高校生向け) PART2

【概要】

これは続編の内容です。

【結論】

平均の生涯賃金を概算すると、高卒と比較して大卒ではおよそ5000万円ほど高く、院卒ではおよそ1億円も高くなる。したがって、5000万円以上の追加賃金を得るために、4年間追加で勉強したいという気概がある学生は、大学に進学をオススメする。またどのような進路を選択すれば、他よりも高い賃金を得られるかはまとめにて概説しているので、ぜひ確認してほしい。

【前編のおさらい】

  • 生涯賃金は学歴によって大きく変わる。
  • 若いうちは学歴に関わらず賃金は同程度だが、30歳以降に大きな差が生じる。
  • 女性は男性と比べ、役職不利や選択職種の影響により、平均賃金が低い。

(続き) 収入レベルは何によって決まるのか

厚生労働省の調査(令和5年賃金構造統計調査)を鑑みるに、我々の生涯賃金は大まかに以下の6要素によって決定づけられています。学歴、年齢、性別については前編で解説しています。PART2は、業種から解説します。

賃金を決める7要素

  • 学歴 (高卒、専門学校卒、短大・高専卒、大卒、大学院卒)
  • 年齢(20-65歳)
  • 性別(男性 or 女性)
  • 業種(建設、医療、製造、飲食 etc.)
  • 業務範囲(総合職、一般職)
  • 雇用形態(正規雇用、非正規雇用(派遣))
  • 役職(社長、部長、次長、係長、etc.)

4. 業種

 図3に、業種別の平均賃金(月収)の推移を年齢に合わせて示しています。こちらのデータは、厚生労働省令和5年賃金構造基本統計調査から引用しています(第1次産業は除く)。このグラフから、大きく3つのことが言えます。

「業種」とは、事業の種類のことであり、世の中のさまざまな事業・ビジネスの種類を区分するために用いる言葉

リクナビ「就活準備ガイド」
図3 職業別の平均月収の推移

平均月収と業種の関係性

  • 業種の違いにより、55歳時の平均賃金に2倍ほどの差が生まれる。
  • 宿泊飲食、運輸、卸売業などの平均賃金が低く専門性が高いほど平均賃金が高い
  • 鉱業と情報通信業は、25-30歳の若い段階から比較的高い賃金が得られる。

 図3で示した通り、業種によって平均賃金は大きく異なってきます。特に鉱業、金融保険業、電気ガス・水道などのインフラ業は非常に賃金が高い傾向にあります。次いで情報通信、建設業、学術研究業、製造業と専門性の高い業種にて収入が高い傾向にあります。そして、医療福祉、教育、卸売業などの第3次産業という賃金水準になっています。また、鉱業と情報通信業は20歳代で30万円弱の賃金があるため、若いうちからやや裕福な暮らしをしたいのであればおすすめです。

 ここで重要なことは、大学進学時の学科選択が平均賃金ひいては生涯賃金にも大きな影響を与えることです。なぜなら、学科の専門性に近い業種に就職しやすいという実態があるからです。例えば鉱業なら材料学部、金融保険なら商学部、情報通信なら情報学部と関連が深いといった形です。ただし、金融保険業には商学部の人しか付けないのかというと、そういったわけではありません。他学部でも就職実績があるので、進学したい学科の卒業者情報を調べ、なりたい職種との関連性を調査しましょう。

5.業務範囲

 業務範囲とは一般的に、「総合職」や「一般職」に分かれており、それぞれで賃金や責任の重さが異なります。図4に、製造業における業務範囲別の平均賃金(年収)の推移を年齢に合わせて示しています。こちらのデータは、厚生労働省「令和4年賃金事情等総合調査」から引用しています。このグラフから、大きく3つのことが言えます。

総合職とは、社内の中核業務を担うポジションです。仕事内容は多岐に渡り、総合職で入社した社員は将来の管理職、幹部候補として会社から期待を寄せられる。

マイナビAGENT「総合職と一般職の違いとは」

一般職とは、総合職のサポート業務を担う立ち位置です。書類作成などの事務作業から顧客対応まで、細かいタスクをこなす。

マイナビAGENT「総合職と一般職の違いとは」
図4 製造業における業務範囲別の平均賃金(年収)の推移

平均年収と業務範囲の関係性

  • 一般職と比較して総合職は、平均年収が100万円以上高い
  • 短大・高専卒総合職は、大卒の一般職よりも高い
  • 20代前半では、学歴や業務範囲に関わらず、平均年収は200万円前後に位置する。

 図4で示した通り、業務範囲によって平均年収は大きく異なる。最も年収が高いのは、やはり大卒の総合職である。ただし興味深い点として、大卒で一般職に就いた人より、高専・短大卒で総合職に就いた人の方が平均年収が高い点である。ちなみに、日本の平均年収は400-500万円(令和5年現在)であるため、短大・高専卒の総合職はこの収入域に該当する。つまり「平均年収程度の生活」がしたい場合には、大学に進学せずに短大ないしは高専を卒業して、総合職で勤務するという選択肢も視野に入る。

 十分に注意すべき点として、高専・短大卒に対する総合職の求人が比較的少ないことである。そもそも大卒と高卒、短大・高専卒の採用形態が異なっており、総合職は大卒のみという場合が多いです。例えばトヨタ自動車の場合、院卒・大卒・高専は総合職採用、短大・専門学校卒は一般職採用になっています。なので、総合職を目指す高専・短大卒の人は、他よりも秀でた能力と相当な覚悟が必要です。

6. 雇用形態(正規雇用、非正規雇用(派遣))

 雇用形態は、「正規雇用」と「非正規雇用」に分かれています。図5に、雇用形態別の平均賃金(月収)の推移を年齢に合わせて示しています。こちらのデータは、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」から引用しています。このグラフから、2つのことが言えます。

正規雇用とは、雇用期間の定めがなく、会社が決めた労働時間をフルタイムで働く労働者

マイナビ転職「正社員とは」

非正規雇用とは、アルバイトやパートタイマー、派遣社員、契約社員のように、一定期間のみの雇用契約に限定して働くこと

エン転職「非正規雇用って何?」
図5 雇用形態別の平均賃金(月収)の推移

平均賃金と雇用形態の関係性

  • 正規雇用に比べ、非正規雇用の平均賃金は著しく低い。
  • 非正規雇用の場合、年齢が上がっても賃金はほとんど上がらない。(女性の場合はやや下がっていく。)

 図5で示した通り、非正規雇用の場合は賃金が20万円程度で高齢まで推移している。この理由としては、アルバイトやパートタイマーの給与は時給制であり、かつ最低賃金に縛られているからである。また昇給制度はあるものの、実質1段階や2段階しかなく、ほとんど給与レベルが変化しないからである。一方で非正規雇用のメリットとして、勤務時間に融通が付いたり辞め易いという点がある。

 派遣や契約社員は非正規雇用に分類され、正規社員と比較してやはり賃金は低い。その理由として、所属する派遣会社のマージンが高いために、社員の給与水準が低いことが挙げられる。また、派遣先の給与は高くとも、派遣社員は時給制の低賃金という実態があるためである。近年では、派遣会社の正規社員として総合職採用を行う企業が出てき始めている。これは、派遣先でどのように働こうとも月給制で派遣会社から賃金が支払われる形態である。個人的には、この形態で勤務するのであれば自分自身で転職を繰り返した方が給与的にも精神的にも豊かな気がしている。

7. 役職

 会社員として勤務する場合、役職という指標が賃金に大きな影響を与えます。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、非役職者の平均賃金(月収)は29万円係長級37万円課長級49万円部長級60万円となっています。当然ですが、役職がついているほど権限と責任が大きく、それに伴って賃金も高いということです。

まとめ

 賃金を決定する重要な要素としては、間違いなく学歴が存在する。従って、日本国民の平均以上の暮らしをしたいのであれば大学へ進学するのが手っ取り早い。しかしながら、大学を卒業したからと言って高収入が確約されるわけでは無い。学歴が賃金を決定する全てではなく、他にも要素が存在している。

 今回紹介した中で、金銭的に豊かな生活を送るために重要な要素は学歴と業種選択である。なぜなら、ある一定以上の大学卒であれば、業務範囲(総合職or一般職)や雇用形態(正規or非正規)を自由に選択できるからである。また大卒は一定以上の専門性があるために、勤務態度次第だが役職につける可能性が高い。学科選択(業種選択)は、将来的な仕事内容と専門性を決めるため、非常に重要である。自分の好みとほしい収入から熟慮して決めるべきである。一方で年齢や性別という要素は変えることが出来ないため、悩み考えるだけ無駄である。

進路選択時、高校生の段階で考えておくべきこと

  • 学歴 (高卒、専門学校卒、短大・高専卒、大卒、大学院卒): どこまで勉強するか。どの程度の収入が欲しいか。
  • 業種(建設、医療、製造、飲食 etc.): どのような仕事をしたいか。どの程度の収入が欲しいか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です