博士課程へ進学を決断した理由  ~修士での就活はやめた~

※22/03/28追記 そこそこ見てくれる方がいましたので、なんか嬉しいです。

※22/07/21追記    博士課程への援助が手厚くなってきているなぁと感じています。

よい波が来ているのかもしれない!!

 

私は修士課程での就職を途中まで行い、やめた

なぜかというと、博士課程へ進学することを決意したからだ。

 

はっきり言って、相当悩んだ。メリットもデメリットも、、、

卒業できるのかな、就職は、、結婚は、、、実力的にも  ハァ~

この決断は今後の人生を大きく左右することになるだろう。

だから同じ境遇の人は進路を決める参考にしてほしいなぁと。

 

結論的には、博士進学を決めた今でも後悔がよぎる時もある。

でもたぶん、この決断を10年後惜しむことはないように思う。

追記:D1になりましたが後悔は全くないです。

追記:D2になりましたが後悔は全くないです。

肉体的に追いつかなくなってきました。ちょっと若返りたい笑

 

[:contents]

 

 

1. 博士課程とは

博士課程とは何ぞやという人はこのブログは見ないだろ!!

って話ですが、一応共通認識のために調べるとこんな感じです。

 

修士課程修了後に進む大学院の課程。修業年限は三年。または、学部を卒業後、五年以上の修業年限で専門的学術研究を行う課程。ドクターコース。

~大辞林 第3版より~

 

世の中の多くの人にとって、博士課程というものは理解しがたく実感のないもののように感じます。また、博士課程を有することの価値やその称号が担保する個人の能力というものも中々評価されていないのが現状ではないでしょうか?

 

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54972?page=3:embed

 

一方で博士号取得者や博士課程学生のブログを拝見すると、必ずしもそうではないように思います。(どちらも一例です。探せばたくさん出てきます。)

 

https://mywarstory.tokyo/phd-so-what/:embed

 

こういった博士号が有する価値の解釈は大抵の場合、研究分野によって大きく左右されるように思います。なのでこれから博士課程の価値を、一般的なメリット・デメリットと私の専門分野(無機化学)からみた評価に分けて考えてみます。

 

1.1 博士課程のデメリット

  •  国内では価値が認められにくい
  •  才能と努力と精神を極限にすり減らす苦行
  •  経済的困難:隣の畑が青く見える
  •  運の要素が大きく絡む

博士課程は海外では能力・社会的地位ともに非常に認められており、研究機関や会社から給料をもらって取得するのが当たり前です。

 

一方で、日本では博士課程の価値は長く専門を鍛えても、一つだけに尖った扱いにくい人※1 という認識が強く、修士課程の方が企業的には使い勝手の良さが見られますね(当然実力を認めてくれる企業もあります)。そして、学費は自分で支払います※2。日本学術振興会の特別研究員制度DCはありますが獲得できるのは一握りです。

※1 追記(22/07/21)  博士課程の学生や、博士持ちの人と出会うことも多くなってきましたが、研究云々の前に、コミュ力や接し方を学んでくれと思う人がそこそこいます。こういう人が"扱いにくい博士"というレッテルを生む原因なのかも。

※2 追記(22/07/21) 学振をとると授業料は全額・半額免除になります。ちなみに私の場合は全額でした。

 

また、修士課程までとは大きく異なり、自分の才能を信じながら努力を積み上げていく作業です。また運によってはその努力が水泡に帰します。そんなときに、稼いでいる同期にあったらそりゃ気分はもう、、、

 

1.2 博士課程のメリット
  •  独立して活動する能力が身につく
  •  永久に失われない社会的地位が得られる
  •  数ある人生の中で特異な得難い経験となる
  •  民間企業でのキャリア形成に有利(専門分野特有)

博士課程のメリットとしては、世界共通かつ永続的な社会的地位の確保にあると思います。名刺にはDr.がつきますし、海外での空港保安検査や事件に巻き込まれて警察沙汰になったときに名刺を出せば即開放という話もよく耳にします。また、海外での職場では修士課程では参加できない会議や報告会がありますから出世にも有利です。

 

特に、博士課程で得られる論文執筆や国際会議での発表、後輩の学生指導などは社会に入る前に見つけることで何処でも活躍できる下地が身につきます。

 

2. 博士課程進学の決断

2.1 実力面から

私は修士課程から大学院に入学したので、B4から始めている学生よりは成果的には劣っていました。しかし、入学してそうそうに研究活動を毎日14時間程度することで、運よくM1の夏には国際誌に論文はアクセプトされましたし、秋には国内学会で口頭発表もできました。

 

さらに、研究を進めM2 の春にはもう一本の論文投稿準備が出来ていました。論文数というのは学部学科によって大きく異なりますが、例年の私たちの研究分野では修士課程の間に1本出るか出ないかだったので、成果としては十分だったように思います。また、講義の成績も無駄によかった(GPA3.6)です。

 

案の定、指導教授から博士課程へ進学してみないかというお誘いがありました。個人的には、「私は高専卒で実力は大学生には負ける、たまたま運が良くて成果が出ただけ」と思っていたのでずっとお茶を濁して返答していました。博士課程進学は正直怖くて不安しかありませんでした。

 

それを2ヶ月ほど続けていた結果、指導教授が痺れを切らしたのかなんなのか、所属大学内外の先生と大手化学メーカーの所長を研究室に呼んで"企業への就職保証"を確約してもらう形で自分の実力を無理やり突きつけられました。

 

2.2 精神面から

精神的には、単純に自分の能力が博士課程に届きうるのか。途中でやめちゃったらどうしよう。修士で就職してしまった方が楽じゃないか。英語話せないしどうしよう。親は納得するかなぁ。教授と今の関係が今後も維持できるのか。博士課程でたあとどうしよう。などなど、本当に考えすぎて眠れない夜を過ごしました。

 

ただ、決め手になったのは少しやっていた就職活動で感じたことや日本の政治的様相への不安でした。就職活動では大手メーカーのインターン と採用選考を数社受けました。しかし、そこで感じたのはこいつらと一緒の立場での就職はいやだ!でした。

 

グールプディスカッションや共同作業を通じて、その場は人事への評価稼ぎなので、個人個人を活かして最良の結果になるような立ち回りを心がけましたが、内心ではこいつらもっと要点をまとめてはっきり話せないのか?など他の学生への不満を抱くこともありました(調子乗ってますね、わたし笑)。結局、採用活動にて内定を5社から得てなんか呆気ない気持ちになりました。どういう選択をすればいいのか、本当にこれで満足か?という、、、

 

そこで、博士課程を取ったOBの方と面談させて頂き、修士卒業よりも博士卒業することで総合研究職としてもっと上の世界を目指せることや、今後日本が安定して戦争なく過ごしていける保証はないから博士課程があると不安はないよ?という話を受けた。博士号がないと、海外ではミーティングの仲間に入れてくれないことは驚いた。実際に世界で働く人の話は現実味があって、博士課程の価値がよく理解できた。

 

2.3 周囲の反応から

周囲というのは両親や研究室の仲間、そして併せて所属していた研究所の先生方やポスドクの方々のことです。

 

私は情報収集を兼ねた食事会を企画することがあったので、相談相手が多かったです。また、お酒の飲みっぷりが良かったのでポスドクの方々にも飲み会に呼ばれることがありました。そういった日常の中で、多くの方々が博士課程の厳しさや楽しさを語っていたのが後々の選択で生きてきました。特に否定的な意見を出さず、博士は辛いけどお前は大丈夫だっていってくれる人が多かったのが支えでした。

 

また、両親は高卒なので勉強のことはさっぱりでしたが、「お金はこれまで通り出さないから勝手にやって!」と言われたのが逆に気楽で助かりました。

 

2.4 金銭面から

先ほど少し述べた気がしますが、博士課程は学費を自分で払います。国立で200万くらいでしょうか。さらに家賃や生活費もかかります。20代後半の無職学生には辛い仕打ちです。

 

日本学術振興会の特別研究員制度(学振DC1)はありますが、非常に狭き門で申し込んだ博士課程学生の3割しか採用されません。しかも、月20万円から税金などが引かれて手取り16万くらいかな。結構辛いです。というか生活はできません。

 

こういった状況の中、金銭面が私の中では博士課程進学を止める一番の要因でした。ただ、ここでもまた教授が解決策を提案して無理やりにでも進学させようとしてきました。

 

それは、学振が落ちたらRA(リサーチアシスタント)として月15万円で雇うということ。その他に企業とのコネを使って奨学金(返さなくても良い)への採用を確約するものだった。正直いうと相当うまい話であった。むしろこれを出されたら月収は新入社員などと変わらないため、金銭面が理由での博士課程の拒否はできなくなった。

 

3. まとめ:博士課程進学に必要だと感じたもの

ああだこうだと色々書きましたが、重要なことはたくさん考えた上で自分自身が決断することです、私の最後の決め手は"もう考えるのめんどくさいし、いいや!博士に飛び込んじまえ!!"でした。最後はなんか短絡的ですね笑笑

 

1. 実力(第一著者で国際誌に1本以上、学会発表2件以上の成果はあるか)

2. 精神力(不安を先延ばしにできる、根拠のない自信はあるか)

3. 人間関係(精神の支えになるような仲間はいるか)

4. 運(人生をかけられるような研究に出会えたか)

5. 教授との関係(博士課程進学を言葉ではなく行動や利益で支えてくれる人か)

6. 決断力(自分で選んだ道か、そうならば後悔はしない)

7. 向上心(足りないところを素直に受け止め改善できるか)

8. 忍耐力(社会的な少数者になる覚悟はあるか)

9. 保護者の理解(決して自分だけの人生ではない、最後に信用できるのは親)

10. 審美眼(博士課程の価値を理解しているのか)

11. 研究をやっていて自信をもって楽しいといえるか

(99%は苦悩だが、1%の新たな発見をたのしめるか)

 

これら全てに納得できる答えを持っている人間は博士課程に進んでもずっと走り続けられると考えている。

 

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