【学振】DC採用への道のり - まず申請すべきかを考える -

 

【結論】

アカデミックを目指すなら何も考えずに必ず出す

就職するならより利益の多いフェローシップ等を獲得する

 

 

いまご覧になっているあなたは日本学術振興会 特別研究員のことはご存知ですかね?

学振にたどり着く人は修士課程または博士課程の学生さんでしょうから、他の記事等で大体はわかっているのではないでしょうか。なので私は詳細を省いて、DCへ採用された身として伝えたいことだけ書いていきますね。テーマは"学振は収入源として最適か"です。先に結論は、"博士課程後の進路による!"です。

 

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1. 本当に学振を取るべきか

博士課程へ進学して活動・生活する上でまず最初に出てくるワードは学振だと思います。学振は全ての学術分野で共通の称号であり、日本国に後押しされた優秀な若手研究者であることを証明する、学生や指導教員にとっても名誉な職歴です。

ですがいざ取得してみると本当にこれがベストか?他のやり方だと金銭的に有利で自由な使い方ができたなぁと思うことがあります。ですのでまずは、学振の良い点と個人的に微妙な点をお伝えしますね。

 

1.1 学振のメリット
  • アカデミック職で生き残るための通行手形になりうる
  • 月額20万円の収入
  • 圧倒的知名度の獲得
  • 100万円程度の研究費が持てる
  • 授業料免除が通りやすい(あくまで体感)
  • 申請書を書く過程でグッと成長する(こことても重要)

・アカデミック職で生き残るための通行手形になりうる

これに関しては最初に述べた通りです。博士学生の中でさらに優秀な層を選ぶわけですから、学振を持っているというのは研究遂行能力が高いことの証明です。なので、アカデミック職を狙っている人はここから先は読まずに、とりあえず学振申請書を書き出してください。(※学振がないからと言って、その人が不出来なわけでは決してないです。)

 

・月額20万円の収入

これは環境や人によって多い少ないの感じ方が違うかと思います。ですが、最低限学生として生きていく分には困りません。国費から出ていますので大変ありがたい話です。なんせ、学生として当たり前の研究活動をしているだけでお金が入ってくるのですから。

 

・圧倒的知名度の獲得

学振という称号・職歴の凄さは当然研究者界隈では知れ渡っています。ですので、顔見知り程度の先生方も名前を覚えてくださいます。また、名刺を渡す際に"おお学振取ってるんだ"と一声頂けることも多く、売名にはうってつけでコミュニティを広げる最大の武器になります。

 

・100万円程度の研究費が持てる

私は最初これに意味があるのか?と思っていました。実際、実験装置や消耗品は指導教員が買うしなぁと。ですが、これは意外に重要です。なぜなら、個人が自由に使っていい予算が大学院生の時からあるというのは貴重であり、研究費の手続き経験や自分への投資の仕方など学ぶところが多いからです。このお金があれば、自分が行きたい国際学会に参加だけしてきてもいいわけです。PC買ってもソフト買ってもいいわけです。

 

・授業料免除が通りやすい

これは所属大学にもよると思います。ですが、大半の大学は授業料が半額免除になるのではないでしょうか。なぜかと言いますと、学振は採用された場合(当然ですが)家族の扶養から外れて自営業のような扱いで(独立生計者として)免除申請をします。そのため、両親の年収などは重要ではなく個人の収入が判断基準になります。後述しますが学振の年収は168万円で計上されるので、比較的低所得者として授業料免除されやすいということです。

追記(22/07/21) 本年度から、学振の人は無条件で授業料全額免除という大学が増えているように感じます。私もそうでした。

 

・申請書を書く過程でグッと成長する

私はこれが学振を書いた上で最も重要なメリットだったかと思います。同時に最もしんどい作業でもありました。

学振の申請書は論文ともレポートとも違うものでして、こういった体裁のものを書いた経験のある学生はほとんどいないかと思います。学振に求められるのは、研究の提案力と過去の実績、そして申請者自身の将来性をアピールする能力な訳ですが、これがとても難しい。書くスペースは少ないし見やすくなければならず、それでいてどうにかチャレンジすれば実現可能な研究内容が記載されていなければなりません。また、自分自身の能力や将来性を自分で論理的に説明します。

絶対に自分一人ではかけません。多くの先生に見ていただきました。20回程度の修正を必要としました。ですが、これを書き終わると採用でも不採用でも必ず社会で使える能力が向上します。ただし、指導教員の添削を受けないのならば、成長はあり得ません。

 

1.2 学振の微妙な点
  • 就職ではあまり役に立たない
  • 少なくとも東京勢は月20万では足りない
  • 年収240万の内、年72万円を研究関連に使う必要が出てくる
  • 第1種奨学金などは併給できない

・就職ではあまり役に立たない

これは知名度の問題です。アカデミック界隈では有名でも人事の方などが必ずしも学振を知っているわけではありません。体感では名前を知っていてもその価値までを理解して頂けれる例は少ないです、ですが、逆にそれは博士研究者を重要視しているかどうかの指標にもなるので、博士後のキャリアに就職を考えている場合は学振は良い試金石になるかもしれません。

 

・少なくとも東京勢は月20万では足りない

これは生活圏によっては致命的な問題になります。私は東京在住ですがかなり厳しいです。学費を満額払った場合、国立では5万弱かかりますよね。それに食費、家賃や光熱費、携帯料金なども併せると12,3万円は飛びます。そこに税金や保険料、後輩との飲み会なども入ってくるでしょう。もう詰みです。さらに次に書きますが、20万のうち6万程度を研究関連に使ったらもう生きていけないですね笑。1980年台から物価は上がっていますが、学振の給料は変わっていません。もう学振だけで生きていくのは困難ですね。

 

・年収240万の内、年72万円を研究関連に使う必要が出てくる

年収240万の内、研究遂行費として年72万円を計上することができます。この研究遂行費とは何かというと、年収の3割程度(月6万円)を研究に関わる費用として計上することで、その分を非課税にするという制度です。つまり、税金を一部免除してくれるということです。ただし、ここで研究遂行費に該当するのはPCや書籍、学会参加費、出張費などです。家賃や光熱費、定期代(DCのみ)や英会話、授業料等は計上できません。

ということは"必要ないPCや書籍を自分の給料から無理やり購入し節税する"ということになります。一方で、研究遂行費を計上しないと追徴課税として最大で16万円ほど取られます。(人によっては)いらないものを買って節税するか、大人しく税金を払うかの2択を迫られます。

トレードオフの関係なのでこれは人次第ですが私は、節税をお奨めします。その理由は研究遂行費を計上すると年末調整時に年収が本来は240万円であるところを差し引いいて168万円で確定します。よって、書面上は低所得扱いで授業料免除等が通りやすくなります。

 

・第1種奨学金などは併給できない

学振の出資元は国費です。よって第1種奨学金などの同じく国費から出資されている資金源は受け取ることが禁じられています。また、アルバイトは可能ですが制約が多いです。規則としては「雇用期間が1ヶ月以上であり、週あたりの労働時間が20時間以上になる場合」は報酬を受け取ることができません。ただし、財団等などの出資が税金ではない場合は奨学金を受け取ることができます。うん、難しい。給料少ないのに他で稼ぐのもダメということです。

 

1.3 学振を取っても、、、?

上記のことをまとめると学振を勝ちとれたとしても、豊な生活は出来ませんし、ましてや彼氏彼女との結婚も考えてくる年齢ですが、そういった点でも安定した生活は出来ません。ただし、これらを考えても学振が持つメリットは大きいです。個人的には、とりあえず研鑽だと思い申請書は一生懸命作成し、合否が出た後に受けるか蹴るかは考えた方がいいと思います。(当たり前のことを言ってますね)

ただし、次の2章で述べる学振以外の別の道というのも考えてみてはどうでしょうか。私は、DC2の採用だったので博士1年の時はプー太郎になるはずでした。ですが実際は別の収入源がありました。この収入源が相当うまい話でして、学振を受けるか今のまま継続するかを相当悩みました。ちょっと紹介しましょう。

 

2. 学振以外の収入源を獲得する

2.1 フェローシップ等のプログラムに採択される

学振以外の資金源を選択するのなら以下のものが有名だと思います(2022現在)。実際には所属大学で待遇の違いが若干あると思いますので要確認ですが、基本的にはどれも20-22万円ほどもらえるかと思います。いずれも審査がありますが、学振ほどの競争倍率ないと思いますし、指導教員との相談次第では獲得しやすいものもあるかと思います。

  • JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム
  • 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ
  • 大学独自の連携事業(大学ごとで要確認)

これらが学振とは異なる点は、国費が出資もとでも資金を受け取れれる可能性がある点です。今のところ参考例が少ないため確証はありませんが、第1種奨学金と併給できたという話も耳にします。ある程度豊かな生活を考えるなら一考する価値はあるかと思います。

 

2.2 公的研究機関で研究員として働く

私の場合がこれに該当します。世の中には独立行政法人として公的に運営される研究施設がいくつかあります。参考としてURL貼ってきますね。

 

https://www.mext.go.jp/b_menu/link/ken.htm

 

こういった研究所は大学と連携をしている場合が多いです。修士または博士課程進学の際に、外部研究機関の研究室を選択することでその連携先での研究が可能になります。その時に当然ながら外部研究機関での身分を決める必要が出てくるのですが、取り決めによっては任期付き研究員としての勤務でお給料がいただけます。

私の場合は手取りでおよそ20万円が出ていました。また税金や保険の処理も全部研究機関の担当者がやってくれるので相当楽でした。学振のような細い制約もありませんし、交通費も出る、そしてアルバイトもOK、奨学金も受け取りOKという高待遇でした。

学振に万が一落ちたとしても、こちらを狙った方がほぼ確実に収入も確保できて自由度も高く良いまであります。また職歴扱いなので、就職前に学生なのにも関わらず勤務経験アリになるのも良い点でしたね。

 

2.3 TA・RAで収入を補填する

少しこのセッションの本旨と外れますが、TAやRAも有効な収入源です。これらは基本的に学振でもフェローシップでも、外部機関でも認められる可能性が非常に高い業務です。TAとRAだけでは食べていけませんが、上記と組み合わせることで生活水準を高めることができます。ここら辺は私が細かく言っても仕方ないので、指導教員に相談してみましょう。

 

3. まとめ:結局、学振どうなのよ?

まとめると、アカデミックで生きていくなら学振一択です。ただし、面倒ごとや制約が非常に多いです。就職する人は、無理に学振を取らずにフェローシップや研究機関での勤務をお奨めします。ですが、学振申請書を完成させるという経験は貴重財産になりますので、ダメ元で出すというのがようと思います。(だいたい採用率25%なので申請者が多い方が合格者が増えて良いですね!)

 

重要なことだけと言って、長々書いてきましたね笑

じゃあ、次回以降は学振の申請書作成について書こうかと思います〜

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